こんにちは、ほむら行政書士事務所の石川です。
- 「特定医薬品」の法的な定義や対象範囲がよく分からない
- 自社の取り扱う医薬品が「特定医薬品」に該当するのか判断できない
- 新設された「特定医薬品供給体制管理責任者」の要件や兼務制限を知りたい
- 業許可申請や変更届の手続、添付書類にどのような変更があるか不安である
- 「特定医薬品供給体制管理業務手順書」に何を記載すべきか分からない
- 「特定医薬品等区分適合性調査」と従来のGMP調査との違いを整理したい
といった疑問を持つ方向けの記事となります。
医療用医薬品の供給不安が社会問題化する中、医薬品の安定供給を法的に担保するための法制度が大きく整備されました。
【この記事で分かる主なこと】
制度の趣旨を正しく理解し、迅速かつ的確に社内体制を整えることがコンプライアンス維持の要となります。
本記事では、「特定医薬品」の定義から製造販売業者の体制整備などを分かりやすく解説します。
ぜひ参考にしてください。

【この記事の執筆者】
- 事務所名:ほむら行政書士事務所
- 代表者:石川翔梧(イシカワショウゴ)
- 愛知県行政書士会所属
- 登録番号:第26192102号
化粧品・医療機器の許可申請から広告表現のチェックなど、薬機法関連業務に「特化」。
難解な法律や複雑な行政手続きを分かりやすく噛み砕き、事業者様のリスク回避とスムーズな事業展開をサポートします。
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特定医薬品とは?どの医薬品が対象?
まずはどのような医薬品が特定医薬品になるのか確認していきましょう。
関係する条文を引用してみます。
17 この法律で「特定医薬品」とは、医薬品のうち、次に掲げる医薬品以外の医薬品(専ら動物のために使用されることが目的とされているものを除く。)をいう。
薬機法第2条第17項
一 第四条第九項第三号に規定する要指導医薬品
二 第四条第九項第四号に規定する一般用医薬品
三 薬局開設者が当該薬局における設備及び器具をもつて製造し、当該薬局において直接需要者に販売し、又は授与する医薬品(体外診断用医薬品を除き、厚生労働大臣の指定する有効成分以外の有効成分を含有しない医薬品に限る。)
四 その他製造販売又は販売の状況を把握する必要がないものとして厚生労働省令で定める医薬品
第一条 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下「法」という。)第二条第十七項第四号の厚生労働省令で定める医薬品は、体外診断用医薬品とする。
薬機法施行規則第1条
条文そのままだと読みにくいうえ、除外規定となっていることからさらに分かりにくい構造になっています。
分かりやすく整理しますと以下のようになります。
【以下の医薬品以外の医薬品】
- 動物用医薬品
- 要指導医薬品
- 一般用医薬品
- 薬局製造販売医薬品(体外診断用医薬品を除き、厚生労働大臣の指定する有効成分以外の有効成分を含有しない医薬品に限る。)
- 体外診断用医薬品
つまり、特定医薬品の対象となる医薬品は、
- 薬局製造販売医薬品(厚生労働省の指定する有効成分以外を含有するもの)
- 医療用医薬品
法令上特定医薬品の範囲はこのようになりますが、指定有効成分以外を含有する薬局製造販売医薬品を取り扱う薬局の方はおそらくほぼいません。
つまり事実上は、医療用医薬品全般が特定医薬品となります。
薬局製造販売医薬品は特定医薬品の対象とはなっていますが、1薬局内での調剤・授与に限られており、市場での供給不測や限定出荷問題を引き起こす可能性が低いです。
そのため特定医薬品の供給管理(責任者選任や出荷制限報告等)の対象から外されています。
それではこれからこの記事では、特定医薬品に関わる影響について解説していきます。
特定医薬品による製造販売業者への影響:供給体制管理責任者など
特定医薬品を製造販売する企業には、供給責任が課されます。
今までは製造販売する製品の品質と安全管理が主でしたが、供給管理についてもあらたに規制が強化されます。
ここでは製造販売業者に対する具体的な規制内容を確認していきましょう。
「特定医薬品供給体制管理責任者」の設置
総括製造販売責任者、品質保証責任者や安全管理責任者の三役とは別に新たに「特定医薬品供給体制管理責任者」の設置が必要になりました。
ここでは「特定医薬品供給体制管理責任者」の要件と役割について確認していきます。
- 「特定医薬品供給体制管理責任者」の要件
-
- 特定医薬品の供給体制の管理に関する業務を適正かつ円滑に遂行しうる能力を有する者であること。
- 特定医薬品供給体制管理業務に3年以上従事した者であること。
- 医薬品総括製造販売責任者、医薬部外品等総括製造販売責任者、医療機器等総括製造販売責任者若しくは再生医療等製品総括製造販売責任者又は医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器、体外診断用医薬品若しくは再生医療等製品の品質管理若しくは製造販売後安全管理に関する業務を行う部門に属する者でないことその他特定医薬品供給体制管理業務の適正かつ円滑な遂行に影響を及ぼすおそれがない者であること。
③について簡単にまとめると、総括、品責や安責でないことに加えその部門に属していないことが必要です。
- 「特定医薬品供給体制管理責任者」の主な役割
-
- 業務の統括(手順書の遵守)
- 「特定医薬品供給体制管理業務手順書」に基づき、供給体制管理業務の全体を統括する。
- 実施状況の確認と記録の作成
- 業務が適正かつ円滑に行われているかを定期・随時確認し、その実施記録を作成・保管する。
- 社内関係部門への措置の決定・指示
- 適正な供給体制を確保するために改善や対応が必要な場合、所要の措置を自ら決定し、関係部門や責任者に指示を出す。
- 外部関係者への文書連絡・指示と写しの保存
- 必要に応じて、製造業者、卸売販売業者、薬局、医療機関等の関係先に対して文書で連絡または指示を行い、その写しを保存する。
- 業務の統括(手順書の遵守)
「特定医薬品供給体制管理責任者」を中心に、後述する特定医薬品供給体制管理業務手順書の運用も適切に行っていく必要があります。
行政手続と許可台帳の変更点
新制度の導入に伴い、製造販売業の許可手続および都道府県での管理台帳にも変更が加えられました。
新規の許可取得時だけでなく、既存業者における変更届出の管理がなされます。
- 許可申請書への記載と添付書類の追加
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第1種または第2種医薬品製造販売業の許可を申請する場合、申請書に責任者の氏名および住所を記載します。
あわせて、以下の書類を行政庁へ提出しなければなりません。
- 雇用契約書の写しその他申請者の責任者に対する使用関係を証明する書類
- 特定医薬品供給体制管理責任者の要件をクリアしたことを証明する書類
実務経験の証明については、過去の所属部署における職務分掌や従事内容を客観的に立証できるよう準備しておく必要があります。
- 製造販売業許可台帳への登録
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都道府県知事が管理する「製造販売業許可台帳」の法定記載事項に、特定医薬品供給体制管理責任者の氏名が追加されました。
行政側においても、どの事業者に誰が責任者として配置されているかが常時把握されます。
- 責任者を変更した際の届出実務
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責任者が交代した場合には、変更後30日以内に管轄の都道府県知事へ変更届書を提出しなければなりません。
新任者の使用関係を証する書類や実務経験証明書の添付が必須となります。
退職や人事異動に伴う後任者の選任漏れは法令違反に直結するため、人事部門との綿密な情報共有が不可欠です。
「特定医薬品供給体制管理業務手順書」の作成
特定医薬品の製造販売業者は、適正な供給管理を行うための社内マニュアルとして「特定医薬品供給体制管理業務手順書」を作成しなければなりません。
GQP手順書やGVP手順書と同様に、法定の必須手順書として主たる事務所への備え付けが義務付けられます。
薬機法施行規則第98条の10の4第4号では以下の手順書作成が要求されています。
- 製造販売する製品の供給体制の管理に関する措置の決定及び実施に関する手順
- 製造販売する製品について出荷の停止又は制限をする場合の措置に関する手順
- 特定医薬品供給体制管理業務に係る記録の保存に関する手順
- 特定医薬品供給体制管理業務に関する部門又は責任者との相互の連携に関する手順
- その他特定医薬品供給体制管理業務を適正かつ円滑に実施するために必要な手順
このなかから特に重要な事項をピックアップすると以下の2点です。
- 出荷停止等のおそれの報告
- 薬機法第18の3、薬機法施行規則第98条の20
- 出荷停止等の届出
- 薬機法第18の3、薬機法施行規則第98条の21
出荷制限を行ったときだけではなく、その”おそれ”が6か月以内に見込まれる場合も報告しなければなりません。
要対応:許可台帳への記載の経過措置
特定医薬品供給体制管理責任者の新設に伴い、許可台帳への記載が必要となりました。
その手続きを行えばよいのでしょうか。
それは以下の通知文書において、経過措置が示されています。
厚生労働大臣及び都道府県知事は、製造販売業者が医薬品の製造販売業者である場合にあっては医薬品品質保証責任者及び医薬品安全管理責任者の氏名を、製造販売業者が特定医薬品の製造販売業者である場合にあっては特定医薬品供給体制管理責任者の氏名を、製造販売業の許可台帳に記載する必要があるが、この省令の施行後この省令の施行の際現に改正前薬機法第 12 条第1項の許可を受けている者に係る当該許可についての最初の更新をするまでの間、医薬品品質保証責任者の氏名等を記載しなくてもよいこととする 。
医薬発0930第5号医産発0930第2号保発0930第7号整備省令について
重要な部分のみ太字にしました。
既に許可を得ている企業に関しては、施工後最初の許可更新のときまでに手続きを行えばよいとされています。
しかし、なるべく早めに行っておくに越したことはありません。
また、合わせて法定化される品質保証責任者や安全管理責任者も同様の手続きが必要です。
雇用証明書や、実際にその者がそのポジションについていることが分かる書類などを準備し、なるべく早めに手続きを行っておくとよいでしょう。
特定医薬品等区分適合性調査とは
2027年(令和9年)5月の改正薬機法施行に伴い、特定医薬品供給体制管理責任者などの導入だけでなく、製造業者・製造販売業者における「区分適合性調査」の枠組みも再編されました。
特に無菌製剤などを取り扱う製造所においては注意が必要です。
“特定医薬品”という言葉が入ってはいますが、定義で解説した”特定医薬品”とは意味合いが異なることにも注意してください。
- 特定医薬品(薬機法第2条第17項):医療用医薬品の限定出荷や供給不足を防ぐための「製品・供給安定規制」
- 特定医薬品等区分適合性調査(薬機法第14条の2第3項):無菌製剤ライン等の高リスク製造工程を対象とした「工場・GMP査察規制」
GMP省令に関する詳細は以下の記事をご確認ください。

2つの調査体系
今までは「医薬品等区分適合性調査」のみでしたが、今回新たに製造管理又は品質管理に関し特に注意が必要な区分として、「特定医薬品等区分適合性調査」というものが新設されました。
根拠法令はもちろん、対象となる製造区分や、調査方法について変更になりました。
| 項目 | 医薬品等区分 | 特定医薬品等区分 |
|---|---|---|
| 根拠法令 | 薬機法 第14条の2第1項・第2項 薬機法施行規則 第53条の5 | 薬機法 第14条の2第3項・第4項 薬機法施行規則 第53条の8 |
| 対象工程 | 一般的な製造工程区分 (医薬品・医薬部外品・化粧品の製造工程の区分全般) | 特に注意が必要な区分 (詳細は後述) |
| 調査方法 | 書面調査 実地調査 | 原則実地調査 |
特定医薬品等区分適合性調査の対象
特定医薬品等区分適合性調査の対象工程は薬局医薬品のうち以下のとおりとされています。
- 最終滅菌法による無菌製剤の製造工程
- 無菌操作法による無菌製剤の製造工程
- 生薬製剤の製造工程
- 固形製剤の製造工程
- 半固形製剤の製造工程
- 液剤製造工程
ただし、「輸出用医薬品」または「過去3年以内に実地調査で適合判定を受けている医薬品」は、かっこ書きの除外規定により本条文の対象から免除されます。
まずは自社の製造している製品の工程を見直し、特定医薬品等区分に該当するかどうかを確認しましょう。
特定医薬品に関する質問
特定医薬品とは?供給体制管理責任者や区分適合性調査の変更点は?【まとめ】
- 医療用医薬品全般が法的な「特定医薬品」に該当するという定義と対象範囲の明確化
- 医薬品の安定供給を確保するための「特定医薬品供給体制管理責任者」が新設
- 製造販売業許可申請や変更届時における責任者の登録、および実務経験証明書等の行政手続が必要
- 製造販売業者における供給管理措置や出荷停止・制限に関する「特定医薬品供給体制管理業務手順書」の作成義務
- 無菌製剤や固形製剤などの対象工程における原則実地調査としての「特定医薬品等区分適合性調査」の導入
特定医薬品の定義や新設された供給体制管理責任者の要件、手順書の作成など、法改正に伴う対応にお悩みでしたら、ほむら行政書士事務所までお気軽にご相談ください。
制度に関するちょっとした疑問や確認事項など、情報収集の段階でももちろん大歓迎です。

