こんにちは、ほむら行政書士事務所の石川です。
- 自社で医薬品の製造を始めたいが、法律の基準が高そうで不安を感じている
- 許可を取得するために、具体的にどのような要件をクリアすれば良いのか全体像が分からない
- 工場を建てる前に、どのような法規制を知っておくべきなのか専門的な知見が欲しい
医薬品は、人の生命や健康に直結する極めて重要な製品です。
そのため、製造業を立ち上げるためには厳しい基準を満たさなければなりません。
具体的には「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(通称:薬機法)」に基づき、都道府県知事などから許可または登録を受ける必要があります。
本記事では、医薬品製造業の基本概要から、事業開始までの具体的な予定についても分かりやすく解説します。
複雑に感じられがちな法律の仕組みについても、根拠となる条文を明記しながら紐解いていきますので、ぜひ最後までお読みいただき、スムーズで確実な事業立ち上げのための参考にしてください。

【この記事の執筆者】
- 事務所名:ほむら行政書士事務所
- 代表者:石川翔梧(イシカワショウゴ)
- 愛知県行政書士会所属
- 登録番号:第26192102号
化粧品・医療機器の許可申請から広告表現のチェックなど、薬機法関連業務に「特化」。
難解な法律や複雑な行政手続きを分かりやすく噛み砕き、事業者様のリスク回避とスムーズな事業展開をサポートします。
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医薬品製造業とは?
まずはじめに医薬品製造業の全体像や製造販売業とに違いを簡単に説明します。
- どんなときに医薬品製造業許可が必要になるのでしょう?
-
実際に医薬品を製造したいときに必要です。
製造販売業とはまた別の許可となっており、製造業のみでは医薬品を市場に流通させることはできません。
この前提を踏まえそれは「製造業」と「製造販売業」という2つの違いについて解説します。
この両者は薬機法という法律の上で、明確に区別されており、求められる役割や基準が異なります。
- 製造業
-
医薬品を実際に「工場で作る」ための許可です。
自社で市場に流通させる権限はなく、あくまで受託製造などを行います。
- 製造販売業
-
医薬品を市場に「出荷・流通させる」ための元締めとなる許可です。
自社に工場がなくても、製造を外部に委託し、自社ブランドとして製品を販売することが可能です。
つまり、どれだけ立派な工場を建設し医薬品を製造したとしても、自社で製造販売業の許可を持っていなければなりません。
許可がなければ、自社名義の製品として市場に出荷・販売することは法律上認められません。
もし「製造業」の許可のみを取得して事業を展開する場合、その事業形態は限られます。
製造販売業者から委託を受けて医薬品の製造を請け負う「受託製造」となります。
異業種から医薬品業界に新規参入を果たす場合、まずはこの受託製造からスタートする企業も少なくありません。
このことを踏まえ、次の項から医薬品製造業の区分や要件などについて解説します。
医薬品製造業許可の区分
医薬品製造業の許可は、どのような医薬品をどのような工程で製造するかによって細かく「区分」が設けられています。
- 生物学的製剤等
- 放射性医薬品
- 無菌医薬品
- 一般
- 包装、表示、保管
大きく以上の5つの区分に与えられ、工場にあった許可や登録が必要になります。
この許可は「製造所」ごとにあたえられるので、同じ区分でも別の場所の製造所の場合はその製造所にも別途許可が必要になります。
【例外】「保管のみ」を行う場合は許可ではなく「登録」で可能
医薬品の製造業は原則として、「許可」が必要となります。
しかし、例外として「保管のみ」を行う製造所については、「登録」によることができ、「許可」と比較し要件が緩和されています。
そのため、外部の物流業者などが医薬品の保管業務に参入しやすくなっています。
例外の例外 許可が必要となる保管
保管については登録となりますが、例外の例外として許可が必要となる保管も存在します。
- 市場への出荷判定待ちの最終製品の保管(製造販売業者の責任で市場へ出荷される最終段階の保管)
- 生物学的製剤などの特殊な医薬品の中間保管
自社の事業計画が、どの許可区分、あるいは登録に該当するのかを構想の初期段階で明確にしておくことが第一歩となります。
医薬品製造業許可(登録)の要件
医薬品製造業の許可(または登録)を取得するためには、薬機法で定められた基準を漏れなく満たす必要があります。
要件は大きく分けて以下の3つに分類されます。
どれか一つでも欠けると認められません。 それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。
責任者(製造管理者の設置)
医薬品の製造業を取得するためには、製造所ごとに責任者(以下、製造管理者という。)を設置しなければなりません。
この製造管理者の要件としては以下のようになっています。
- 製造管理者
-
- 薬剤師
以下の場合は薬剤師に代え、以下の者によることができる。
- 生薬のみ
-
- 生薬の製造又は販売に関する業務(品質管理又は製造販売後安全管理に関する業務を含む。)において生薬の品種の鑑別等の業務に5年以上従事した者
- 厚生労働大臣が上記に掲げる者と同等以上の知識経験を有すると認めた者
- 医療用ガス類のみ
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- 旧制中学若しくは高校又はこれと同等以上の学校で、薬学又は化学に関する専門の課程を修了した者
- 旧制中学若しくは高校又はこれと同等以上の学校で、薬学又は化学に関する科目を修得した後、医療用ガス類の製造に関する業務に3年以上従事した者
- 厚生労働大臣が上記に掲げる者と同等以上の知識経験を有すると認めた者
- 薬剤師を置くことが著しく困難な場合
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- 大学等で、薬学又は化学に関する専門の課程を修了した者
- 厚生労働大臣が上記に掲げる者と同等以上の知識経験を有すると認めた者
- 保管のみを行う製造所
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- 旧制中学若しくは高校又はこれと同等以上の学校で、薬学又は化学に関する専門の課程を修了した者
- 旧制中学若しくは高校又はこれと同等以上の学校で、薬学又は化学に関する科目を修得した後、医薬品の製造に関する業務に3年以上従事した者
- 厚生労働大臣が上記に掲げる者と同等以上の知識経験を有すると認めた者
原則として、薬剤師が必要になりますが、取り扱う製品や保管のみの場合には要件が緩和されます。
また、製造販売業の3役との兼務も可能な場合もあるため、まずは自社の状況を確認する必要があります。

構造設備要件
2つ目の要件は、製造所となる工場や倉庫の「建物や設備」に関する基準で、「薬局等構造設備規則」に定められた要件を満たす必要があります。
医薬品を製造・保管する施設は、品質の低下や異物混入を防ぐ必要があります。
ある製品の成分が別の製品に混入してしまうことも防がなければなりません。
許可(または登録)の区分ごとに以下のような構造設備の基準が規定されています。
条文数が多いため主なものを抜粋します。
- 換気および照明が適切であり、常に清潔に保たれる構造であること
- 居住場所や不潔な場所(屋外など)から明確に区別されていること
- 製造や保管の作業を安全かつ円滑に行うために支障のない面積を有すること
- ほこり、虫、ネズミなどの侵入を防ぐための構造または設備を有すること
- 作業室の床や壁は、コンクリートや板張りなどで隙間がないこと(洗浄・消毒などの清掃が容易な材質であること。保管のみの場合は一部緩和あり)
- 廃水や廃棄物の処理に必要な適切な設備を備えていること
なお、実際に医薬品を市場に出荷するための製造販売の「品目承認」を得る段階では、工場がGMP省令(製造管理及び品質管理の基準に関する省令)に適合していることの確認を受ける必要があります。
欠格条項に該当しないこと
申請者(申請者が法人であるときは、薬事に関する業務に責任を有する役員を含む。)が、以下に該当するときは許可等を得ることができません。
- 許可の取り消し履歴
-
薬機法に係わる”許可”(第七十五条第一項の規定)を取り消され、取り消しの日から3年を経過していない者
- 登録の取り消し履歴
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薬機法に係わる”登録”(第七十五条の二第一項の規定)を取り消され、取り消しの日から3年を経過していない者
- 刑事罰の履歴
-
拘禁刑以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた後、3年を経過していない者
- 薬事関連法令の違反
-
薬機法、麻薬及び向精神薬取締法、毒物及び劇物取締法その他薬事に関する法令で政令で定めるもの※又はこれに基づく処分に違反し、その違反行為があつた日から2年を経過していない者
- 薬物中毒
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麻薬、大麻、あへん又は覚醒剤の中毒者
- 心身の障害
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心身の障害により薬局開設者(又は各種許可業者)の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
- 知識や経験の不足
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薬局開設者(又は各種許可業者)の業務を適切に行うことができる知識及び経験を有すると認められない者
※その他薬事に関する法令で政令で定めるもの
- 大麻草の栽培の規制に関する法律
- 覚醒剤取締法
- あへん法
- 安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律
- 薬剤師法
- 有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律
- 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律
- 国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律
- 独立行政法人医薬品医療機器総合機構法
- 遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律
- 再生医療等の安全性の確保等に関する法律
- 臨床研究法
責任者や構造の要件を満たしても、この欠格条項に該当していた場合は許可を取得できないため注意してください。
医薬品製造業許可とは別?承認のための要件:GMP省令への適合
医薬品の製造業の許可等を取得するための要件とは別に、医薬品の承認を受けるためにはGMP省令へ適合する必要があります。
少し分かりにくいですが、「作るための許可」と「作って市場に流通させる」2段階のステップが必要になります。
許可取得の際は必要でありませんが、その「作って市場に流通させる」ためにはGMP省令というものに適合しなければなりません。
一部GMP対象外の製品もありますが、医薬品製造業の取得を検討している方は許可取得の段階でGMP適合を視野にいれましょう。
GMP省令の概要については以下の記事にて解説しています。

医薬品製造業許可(登録)のフロー例
医薬品製造業の許可や登録を取得し、実際に製品を製造(保管)して事業を開始するまでには、準備が必要です。
そして長期間にわたる計画の管理が必要となります。
ここでは、流れ例と期間の目安について段階ごとに解説します。
まずは、どのような医薬品をどのような規模で製造・保管するのかを決定します。
必要となる許可・登録区分はどれに該当するのかを確認します。
同時に、対象となる製品に求められる設備の基準や管理のレベルを把握します。
基準を満たすための設備設計を行います。
人やモノの動き、空調の区分け、水処理設備(製造の場合)などについて検討します。
専門の設計会社と打ち合わせを重ね、基本となる図面を作成します。
施設の建設や高額な設備の改修工事が始まってから、あるいは完成した後に問題が発覚することがあります。
- この動線では他の製品の成分が混ざる危険性があるため許可を下ろせない
- 空調や温度管理の要件を満たしていない
このように行政から指摘された場合、やり直しのために多大な費用と時間の損失が発生してしまいます。
そのため、基本設計(平面図や人の動きの図面、空調の流れ図など)が完成した段階で、必ず行政の窓口に事前相談に赴きます。
行政の担当者と早い段階から対話を行い、指導事項を素直に設計に反映させながら計画を進めることが大切です。
行政からの助言を反映した設計に基づき、実際の建設工事や内装工事を行います。
製造や保管に必要な機器の搬入と設置も実施します。 事業の計画の中で最も費用と時間がかかる段階です。
設備が設置された後、それが設計通りに正しく稼働するかどうかを確認します。
要求される環境(温度、湿度、清浄度など)を維持できるかどうかを検証し、文書化する作業を行います。
これと並行して、法律で作成が義務付けられている各種の作業手順書の作成を進めます。
衛生管理、製造管理、品質管理、問題発生時の対応、自己点検などに関するルールブックを作成します。
工事が完了し、機器の検証結果や手順書など全ての必要書類が揃った段階で申請を行います。
管轄の都道府県(薬務課)または地方厚生局へ製造業許可(または登録)の書類を提出します。
申請が受理された後、行政の担当官(薬事監視員など)が実際に施設を訪問します。
そこで実地調査が行われます。 図面通りに設備が整っているかだけでなく、作成した手順書に基づいて従業員が正しく作業を遂行できるかという運用面も厳しく審査されます。
(※保管のみの登録の場合は、実地調査が簡略化または省略されるケースもありますが、事前の確認が必要です。)
実地調査で指摘事項があった場合は、その改善報告が受理される必要があります。
基準に適合していると判断されれば、晴れて製造業許可証(または登録証)が交付されます。
申請書の提出から交付までの標準的な処理期間は自治体によって異なります。 概ね1〜2ヶ月程度を見込んでおくと良いでしょう。
医薬品製造業許可(登録)取得後も続く定期的な立入検査への備え
- 許可の更新期限は「5年」
- 立ち入り検査がいつ来ても問題ない体制・運用維持
無事に医薬品製造業の許可や登録を取得し、事業が開始した後も、安心しきってはいけません。
法令の規定により、医薬品製造業の許可および登録の有効期間は原則として「5年」と定められています。
したがって、継続して事業を行うためには5年ごとに更新申請を行う必要があります。
再び設備や管理体制が基準に適合しているかどうかの実地調査を受けなければなりません。
さらに、更新の時期以外でも、行政による定期的な立入検査が実施されることがあります。
重大な品質問題が疑われる際には、事前の通告なしに検査が行われる可能性もあります。
これらの検査においては、日々の業務において定められた基準に基づく製造管理および品質管理が手順書通りに正しく運用されているかが確認されます。
また、記録が改ざんされることなく適切に作成・保管されているか(記録の正確性)が調べられます。
それを現場で働く従業員全員が深く理解し、日常の作業の中で確実に実行できているかどうかが問われるのです。
そのため、法律に規定されている定期的な社内教育の実施や、自己点検の仕組みを実質的に機能させる必要があります。
組織全体として常に「いつ検査が来ても問題ない状態」を維持する企業風土を育て続けることが重要です。
医薬品製造業許可の区分は?要件などを分かりやすく解説のまとめ
- 製造業は、製造を行うための許可である。(製造販売とは別のもの)
- 許可取得には「欠格事由非該当」「人的要件」「構造設備要件」が必要。
- 手順書は作るだけでなく、実地調査で説明できるレベルまで社内に落とし込むことが不可欠。
- 手続きを進める際は、必ず管轄の都道府県への事前相談からスタートする。
- GMP省令への適合も見据えておくこと
要点をかなりかいつまんで解説しました。
実際には行政との調整等で苦慮する場面をあるかと思います。
医薬品製造業許可にあたって、相談したいことがあれお気軽にお問い合わせください。

